【吉川 洋】 転換期の日本経済
→【討論】
製造業と非製造業
バブル時に、その後不良債権を多く抱えることになった土地投資を盛んに行ったのは、非製造業であった。また、製造業は不況に苦しむ中でも国際的に有数の技術を持つ産業が多いのに引き替え、非製造業は効率性などの面で大きな問題を抱えている。
55年〜60年代は、建設・サービス業の労働生産性は製造業の倍以上であった。しかしこれが70年代に製造業に抜かれ、80年代には建設・サービスなど非製造業の労働生産性は目立って落ちた。高度成長期を牽引したのは製造業であるが、この時期農業から製造業へシフトしていくとき、製造業は農業より生産性がずっと高かった。需要が伸びていくセクターは衰退していくセクターに比べ生産性が高いのが通常の姿である。
付加価値のシェアでは、70年に45%であった非製造業は、95年には64%に上昇した。他方製造業は70年の45%から95年には34%まで落ちている。80年代ー90年代は付加価値のシェアでいえば非製造業の方が伸びている。サービス業はシェアは高いが生産性は低下している部門である。サプライサイドで労働生産性の低いセクターへ、需要が長期的にシフトしてきたわけである。
中小企業が大部分をしめる建設業では、たとえば83年度に施工実績を持つものは、建設業全体の半分に満たない。あとの建設業者は受注しそれを大きな建設会社に丸投げする「上請け」をしているだけで建設をしていない。
過去40年間の労働生産性の伸びと資本投下率の関係を見ると、製造業は大体一致してるが、70年代に入ってから非製造業は生産性がのびず、効率の悪い投資となっている。このころから需要の方はこうした効率の低い「サービス」へとシフトした。このことが高度成長終焉後の日本経済の抱える問題である。
<記録:土田とも子>
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