【吉川 洋】 転換期の日本経済
→【討論】
為替レート
90年代の日本を理解する上でもう一つ重要なのが為替レートである。1985年のプラザ合意以後2年で、為替レートが1ドル240円から120円になるという、急激な円高が起こった。こうした急激な円高が不況の犯人という意見もあるが、それは正しいとはいえない。この時期に製造業のエネルギー生産性が高くなり、円高はそれを反映して起こった。80年代に円は過小評価であったのが、大体均衡レートになったといえる。円高は日本経済にとって悪いことではなく、中・長期的には日本経済の強さを示すものである。
この円高の副作用として、海外旅行がかなり自由にできるようになり、大幅に増大した。国内のリゾート開発にも期待値が上がり、これは現在の不良債権につながっている。海外旅行が盛んになって国内リゾ−トはむしろ相対的に需要が減る部門であったはずだが、ここへ投資を誘導したのは大きな政策の間違いであった。マクロスケールで経済政策のピントがずれていた。
<記録:土田とも子>
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