【末廣 昭】 「コーポレート・ガバナンス」と「グッド・ガバナンス」—世界銀行、日本、タイの捉え方— →【討論】
【報告のレジュメ】アジア経済危機と世界銀行の「コーポレート・ガバナンス」論
- The World Bank, East Asia: The Road to Recovery, Sept. 1998.
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アジア通貨・経済危機の背景
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危機前のマクロ経済の安定的運営は評価。現象としては、国際短期資金の流入、国内金融市場の過剰流動性と為替リスクの管理に失敗。
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ヘッジファンドによる通貨攻撃や、貿易の域内依存率の上昇などはそれほど重視しない。むしろ、対外要因ではなく、国内金融市場の「構造的要因」「制度的弱さ」に求める。
→通貨危機の「伝染病現象」は、域内の貿易構造や工業化の発展パターンにあるのではなく、むしろ海外投資家が、97年7月以降、タイをはじめアジア諸国の金融制度に疑問をいだき、いっせいに資金を引き上げたため。
- 国内債券市場の未発達のもとでの金融自由化の推進(自由化方針と制度のミスマッチ)
→商業銀行・ノンバンクを媒介とする間接金融への過度の依存
→商業銀行の国内での制度基盤の未発達
→海外資金、短期資金やオフショア市場に依存
→リスク管理失敗により、いっきょに国内不良債権問題と為替差損問題が生じる
→金融クランチ・国内不況の深刻化。
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経済危機回復のシナリオ
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コーポレート・ガバナンスの強化と国内金融機構改革の統合、同時並行的実施。
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商業銀行、金融機関に対する「プルーデンシャル規制」の導入と徹底。
→不良債権(NPL)の定義(元利延納3カ月以上)、一般引当金、貸し倒れ引当金、リスクアセットレイシオ(BIS自己資本規制、8・5%)。
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金融機構、事業会社の「コーポレート・ガバナンス」の強化。
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破産法改正、破産裁判所設置法、担保権に関する改正、外国人事業法改正など
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会計、監査基準に関する「グローバルスタンダード」の導入。(タイでは、登録会計監査人は約2300人、政府公認は900人弱)
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説明責任性(accountability)の導入。
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情報の開示の義務づけと第3者機関によるモニタリング制度の導入。
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世界銀行が「経済社会再構築プロジェクト」に融資するにあたってのコンディショナリティ一覧
→ 【表5、参照】法律制定、会計・監査が中心。
- 世界銀行の4000社企業調査(99年3月まで)
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マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国の各国800社、計4000社のサンプル調査(実際は、3710社、うち大企業は1257社)。
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製造業の5セクター(食品、繊維衣類、電機機械、化学、自動車部品)
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企業の所有構造と取締役会の構成(社内、社外重役の比重など)
→ 【図2、参照】
※ホームページでは図表は省略した
<記録:土田とも子>
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