アンケート調査の目的
1.希望の形成と行動の経緯を捉えて、次世代の選択に役立てる
福井市で育った若者のうち、どれくらいの比率の人が高校卒業後に福井を出たのか、また県外の進学先を卒業した後や県外での就労後に、どれくらいの人が福井にUターンしたのか。それぞれの選択をした人はどのような人なのか。そしてそもそも、人生のどの段階でどのような選択をしてきた人が、福井に残る・福井を出る・福井に戻ることを希望し選択するようになるのか。——これらがこの調査で我々の知りたい、直接的な内容です。
その背後にはより大きな問いがあります。自治体や地域全体の維持・発展のための人材確保という視点に立った時、人口流出は痛手です。しかし、一人一人の個人は、家庭や学校の中で人生設計のイメージを育み、現実の条件の中で軌道修正しつつも、できるだけ希望をかなえようと行動します。その舞台は、福井の中とは限りません。「地域の希望と個人の希望の二つは、どのように接点を見出しうるのか」という問いは、福井の将来にとっても、地域格差を抱える日本や世界各地の未来にとっても、避けて通れない社会的課題です。同時に、同窓会の皆様が日々支援していらっしゃる後輩の皆さん、つまり現在の高校生にとっては、目の前の課題です。
例えば、県内での就職を希望していたのに、県外に定着した人は、どのような事情にあったのでしょうか。そもそも、どのような時期に、どのような環境の中で、県内就職の希望を抱くようになり、キャリアや家族形成等のどのような条件が重なって、結局は県外に定着していったのでしょうか。「福井に仕事が無かったから」という大掴みな答えよりも、もっと細かいメカニズムを捉えたいと考えます。そこから、学校の進路指導や、行政の政策、民間企業の求人アプローチ、個々人の人生設計に活用できる要素を見つけだし、次世代がもっと多様に個人の人生の希望を育み、もっと多様に地域の希望との接点を見つけることに、本調査が少しでも役立ってほしいと考えます。
2.同窓会を通した調査が必要な理由
福井に残る・戻るという選択の構造を知るためには、出身者一人一人に聞かなければ調べられないことが多くあります。その際に、高校卒業後に福井に残った人、福井を出た人、福井に戻った人を、できるだけ元の人数を反映するように、偏り無く選んで調査することが不可欠です。Uターンした人の特徴を知るためには、比較対象として福井を出たままUターンしなかった人や、そもそも福井を出なかった人の情報が欠かせません。そのため、Uターンした人だけをつかまえても調査は成立しないのです。いわば、地域の同世代全体の縮図になるように対象者を抽出する必要があり、そのためには、一人でも多くの方の回答へのご協力が必要です。
3.調査の希少価値
ある地域からの移動やUターンの全貌を、個人のライフコースや意識まで詳細にとらえて解明しようとする調査はこれまでほぼ皆無です。そのような中、我々の希望学調査では、岩手県釜石市の市内全四高校の同窓会を通じて、同様の調査を実現しましたが、もっと多くの地域で調査データが蓄積される必要があります。地域格差が叫ばれながらも、実際の居住地選択行動の詳細は判明していないのが現状で、本調査の成果には、Uターン政策や、学校での進路指導方針などにも反映しうる、貴重な公共的価値が期待されます。ぜひとも皆様のご協力をお願いいたします。