【橘川 武郎】 1990年代の日本社会をめぐって
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【討論】
IV.国境の壁を越えて
国際比較
構造転換に絡んで各国で同様のことが問題化している。比較することによって、その作用と反作用の共通性と差異を抽出する。
末廣氏はタイの、国家と社会のグッドガヴァナンス、ソーシァルガヴァナンスという概念を検討し、タイの現実とコーポレイトガヴァナンス論とは切り結ばない、と結論付けている。
日本ではガヴァナンスというとき、まず企業の問題として考えられている。外から同じ構造調整の圧力がかかったとき、日本は企業関係の問題が表に出、タイはそうではない、という差異が明らかになる。ここから次のような日本社会の特徴が見えてくる。
日本の社会は三位一体の三角形がきれいに描ける。企業が社会に対して持つ意味が、ヨーロッパ、アジアと比べると大きい。社会が解決しなければならない福祉や教育の問題を、企業が担ってきたのが日本の特徴である。
国際関係
たとえばケルブレは、ヨーロッパ統合は危機への対応ではなく、戦後の高度成長でヨーロッパの同質性が高まり、その帰結として地域統合が進んだと言う。ここから、成長を経験したアジアで同質性が出てきて地域統合の可能性があるかどうか、ないとしたらヨーロッパとどこが違うか、などが重要な論点となろう。工藤・平島プロジェクトがこのあたりの問題に関わると思われる。
<記録:土田とも子>
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