セミナーの記録と日程

全所的プロジェクト研究

第18回プロジェクト・セミナー
原子力発電とエネルギーセキュリティ

2000年5月23日 ◆於:社研大会議室
報告:鈴木 達治郎

第18回プロジェクトセミナーでは鈴木達治郎氏から報告がなされた。

【鈴木 達治郎】  原子力発電とエネルギーセキュリティ→【討論】

I

 エネルギー政策が他の産業政策と違うのは、巨大な船のごとくかじ取りが難しい点にある。巨大な産業インフラを必要とし、また、いったん確立されると、その変更も難しい。

 なかでも原子力発電は、ウラン鉱山から燃料加工、使用済み燃料貯蔵、再処理、廃棄物処理まで非常に長いリードタイムが必要とされ、計画した時点から実際に発電所で動きだすまで10年はかかると言われている。逆に、今ある原子力の姿は10年、20年前の意思決定から生じた結果と言える。

 現在世界には約420基の原子炉があり、それが全世界の電力需要の16%をまかなっている、そしてここまでくるのに30年を要したという状況をどう考えるか、過去の経緯を理解する必要があると思われる。

 開発を始めた60年代は、もっと原子炉を建てようという計画があった。アメリカだけでも70年代には1000基、日本でも100基、2000年には世界で3000基を予想していた。それから考えると現在の420基は縮小しているが、電力需要の16%は一つの電源としては大きなもので、いっぺんになくすとなると行政に大きな影響を与える事は間違いないというのが現状である。世界的に見ると発電所は現在、北米と西欧に3/4、アジアに1/4存在している。今後、北米と西欧は横ばい、もしくは減少に向かう事が予想され、20年後を見ると北米、西欧、アジアで1/3づつになりそうである。また、新しく建てられる発電所のうち70%がアジアに集中している。その内訳は日本,韓国,中国がほとんどを占める。

 北米、西欧が何故これ以上増やさないか、は規制緩和による自由競争の結果、経済性優先の立場から新規原子炉は不利な点で敬遠されている。また、イデオロギー上反対する国もあるし、もしくは住民投票で反対となる場合もある。しかし現実的には、すでに出来上がった施設を使い、経済上安くできるという点でなかなか閉鎖が難しいという面もある。

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<記録:中島美鈴>