【小池 洋一】 ラテンアメリカの自由化
1.輸入代替工業化(ISI)再考
ラテンアメリカについての研究はまだ部分的な分野にとどまっている。そこで、これからの研究課題に重点をおいて以下整理してみた。
ISIの経済的・政治的・思想的背景に関しては、世界の政治的、経済的要因の中で議論を深める必要はあるものの、かなり研究が進んでいる。ISIの破綻の要因に関しては長期にわたる手厚い保護が挙げられ、その背景として?一次産品輸出による外貨獲得、国内のマーケットが比較的大きかった、?政治的影響力などが挙げられるが、政治体制・官僚制・社会構造(ポピュリズム、任命官僚制、社会格差)との関係でISIをもう一度議論する必要があるのではないか。
さらにISIと生産システム(需要・技術・競争条件)が引き起こしてきたパラダイムの転換に整合的であったか、という点についても議論が必要である。ISIが制度の面で問題無いとしても、生産システムが転換した場合に従来のISIが適応できたかどうか、例えば台湾は新しいシステムにflexibleに適応出来たが、ラテンアメリカでは必ずしもそのように適応出来なかったことなど議論が必要であろう。
ラテンアメリカのISIは第一次段階(軽工業など)については比較的順調だったが、70年代始めのニクソンショックによる金兌換停止、さらにそれに続くオイルショック、その中でのISIの第二次段階へのシフトへの圧力が生じた。しかし、ISIの高次段階への移行は失敗した。つまり、ISIの明確な破綻は70年代以降におこった。
以上のような観点を考慮に入れて、ISIを再評価すべきである。
<記録:表江清美>
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