【小池 洋一】 ラテンアメリカの自由化
3.自由化と構造変化
マクロの面においては成長率上昇など高い成果を上げている。しかし、その一方では貿易収支が輸入自由化などにより赤字となっており、依然問題は残っている。またグローバル化の進展をにらんだ比較研究が必要である。
その中で1990年代、ラテンアメリカにおいてGDPに占める工業の割合が数ポイント下落している。この減少を工業の後退と見るか、調整あるいは過渡期と見るかはまだ不確定である。現在の現象として、?従来は無かった非伝統的な一次産品輸出、?sweat工業に見られる労働集約的工業、?工業の特定国への集中(特にブラジルとメキシコ)が考えられる。これらを全体として工業の後退と判断するか、そして工業の特定国への集中は工業全体にとって望ましいのか、これらの判断は難しい問題である。
このような現状を特徴付けるのはアジアと同様に多国籍企業の一人勝ちが強まり、さらに伝統的分野(例 食品、サービス)にも参入している事である。その過程で生産性の上昇、新製品の導入などプラス面もあるが、問題はこのような発展方法が可能であるかということである。
NAFTAなどにより地域統合の拡大など、グローバル化以降の構造変化について研究は進んでいるが、問題はそのマイナス面、例えば失業率の上昇、つまり雇用の減少・インフォーマル化を過渡的と判断するか、それとも構造的と判断するか議論が必要である。
さらに、分配の不公正化と自由化との関係も重要な研究課題の一つであろう。例えばメキシコの為替切り下げは分配の不公正化を招いている。
政治的問題に関しては、国家の後退と並行する形でNGOや市民運動が拡大していることも注目すべきだろう。
自由化と構造変化の相互関係については、自由化に伴って生じている様々な産業、雇用あるいは企業体制の変化を経済発展の関連でどう評価するか、という点はまだ議論が十分になされていない。
<記録:表江清美>
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