【福沢 啓臣】 グローバル化とドイツの大学改革
→【討論】
IV
最後にベルリン特別州の話をしたい。ベルリン特別州というのはベルリン市のことであるが、市でも州と同じ権限を持っていて州政府がある。ベルリンには3つの総合大学と、8つの単科大学、4つの芸術大学があって、行政側から要求されている学生の数は8万5千人だが、実際には10万人以上の学生がいる。なぜこういうことが起きるかというと、ドイツの場合には定員制がないからである。ベルリン自由大学は自由な学風で、4〜5年前、一番多いときには7万6千人の学生がいた。今は4万3千人である。5年間で一種の「企業努力」をして、あまり勉強しない学生を退学させるなど減らした。さらに4万人以下に減らそうとしているが、なかなか難しい。なぜそういうことをしるかというと、ベルリンの壁が崩壊するまでの西ベルリンは一種の天国で、収入が少なくても連邦政府から予算が来ていて、世界のショーウィンドウとしてベルリン市の機関は大学を含めて潤っていた。
しかしドイツ統一の後、特別扱いはダメということで連邦政府からの特別援助金がなくなってしまったからである。自分達の収入だけでやっていかなければならなくなったが、ベルリン市というのはもともと産業がなく、税収も少ない。苦しい状況に陥り、ベルリン自由大学は5年前に比べて大学予算は3割減で、教授の数は680人から400人に減った。他のベルリンの大学も同じような状況にあったが、ただしフンボルト大学は東の大学で再建しなければならないということで、フンボルト大学はふんだんにお金がつぎ込まれ、設備もととのって、学生数も1万5千人で少ないので予算的にはあまり問題ない。しかしベルリン自由大学やベルリン工科大学は、いかに学生を減らし、教授を減らすかということをやってきた。それでもベルリンにある大学はどうなるのかということで、1997年の5月に大学の総長とベルリン市が協定を結んで、大学が独自に合理化を進めるかわりに予算を減らさないということを決めた。そして学術審議会が現在、評価を出す予定である。
<記録:渋谷謙次郎>
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