【樋渡 展洋】 国内変容と地域秩序の国際的要因→【討論】
II.問題点の検討
まず、政府が直接政策対応するような経済の「国際化」とは何かがまだ十分整理されていない。
企業の多国籍化とそれに伴う雇用の空洞化の企業課税の影響というミクロレベルでの国際化があるが、それは公共政策の大きな影響要因とは言いがたい。
マクロレベルの国際化の中でも貿易の自由化は、G7に限定すると貿易依存度はそれほど増加していない。従って、通常理論的に予想されるような交易セクター(特に輸出セクター)と非交易セクターの政治的対立軸の激化またはその力関係の変動は想像できない。これに対して、国際資本移動の自由により先進諸国、特にG7諸国の金融政策、ひいてはマクロ政策の自律性は制約される。
ところで、経済の国際化に対する政策的対応を考える場合、従来の通説には問題がある。いわゆるLiberal Theoryの問題点としては、マクロ政策(金融、為替)決定が社会的利害の変動を反映していると考えるが、実際には、政府が社会的利害から自律的に、国際環境への対応として、マクロ経済運営の基調を決定し、それにあわせて社会的利害を動員する側面があるのではないか? また、従来、国際化の国内的影響に関しては「小国」(social democratic corporatism)に焦点を当てた研究は輩出しているが、いわゆる「大国」(liberal market regimes)の比較分析が少ない。その結果として「大国」間の差異と、特にその相互影響を捕らえにくいので はないか。
<記録:渋谷謙次郎>
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