【渋谷 博史】 アメリカ経済分析の視角 →【討論】
II.アメリカ経済分析視角の提案
パクス・アメリカーナあるいはアメリカナイゼーション(グローバリゼーション)が他の国・社会に及ぼすインパクトを「因数分解」するという問題意識。戦後の日本社会あるいはアジア社会の成長・拡大・高度化・構造変化に対してアメリカが及ぼした規定性を考えるために、そのインパクトをもたらすアメリカ経済社会の各要素を分析・理解する試みである。
特にアメリカにみられる資本主義的市場経済の「純粋型」と、それを包み込む「社会的仕組み」(宗教、倫理、民主主義、ポピュリズム、政府、法制度、規制)をできるだけ分離して理解する。国境を越えてぶつけられるアメリカのインパクトは、後者の「社会的仕組み」の部分をそぎ落とした前者の「純粋型」の部分が突出する構造であり、たとえば、ウォール・ストリートからの証券投資・資金流入や、直接投資や、経済摩擦における開放要求を通して、アメリカ流のビジネス・システム(企業経営・金融システム等)が強く求められる。場合によっては、アメリカ流の民主主義の早期実現も求められる。
そのようなアメリカの求める「純粋型」の導入に際して、それぞれの国・社会が独自に持つはずの「社会的仕組み」に整合するように、うまく受け止めてやらないと、その国の「人間社会」が崩壊してしまう危険がある。
したがって当面強まるであろうアメリカのインパクトの中で、何を受け入れ、何を拒絶するのかを決定するためにも、このような問題意識を持って、アメリカ経済社会を分析検討して、その成果を国民に提供すべきであろう。
<渋谷博史>
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