セミナーの記録と日程

全所的プロジェクト研究

第3回プロジェクト・セミナー

1999年6月22日 ◆於:社研大会議室 

アメリカ経済分析の視角  報告:渋谷 博史

グローバリゼーション下の農業・食糧問題—国民国家と国際調整—  報告:加瀬 和俊

 プロジェクト・セミナーは第3回をむかえ、グローバリゼーションの進展が市場とその外部の関係にさまざまな問題を引き起こしていることに関連して二つの報告と議論が行われた。渋谷博史氏からはアメリカ市場主義の波及の特殊性とその問題点、加瀬和俊氏からは、市場化になじまないものとしての農業・食糧に関する国民国家と国際調整の間の問題が報告された。

【渋谷 博史】  アメリカ経済分析の視角  →【討論】

I.時代遅れの『講座アメリカ経済』

II.アメリカ経済分析視角の提案

 パクス・アメリカーナあるいはアメリカナイゼーション(グローバリゼーション)が他の国・社会に及ぼすインパクトを「因数分解」するという問題意識。戦後の日本社会あるいはアジア社会の成長・拡大・高度化・構造変化に対してアメリカが及ぼした規定性を考えるために、そのインパクトをもたらすアメリカ経済社会の各要素を分析・理解する試みである。

 特にアメリカにみられる資本主義的市場経済の「純粋型」と、それを包み込む「社会的仕組み」(宗教、倫理、民主主義、ポピュリズム、政府、法制度、規制)をできるだけ分離して理解する。国境を越えてぶつけられるアメリカのインパクトは、後者の「社会的仕組み」の部分をそぎ落とした前者の「純粋型」の部分が突出する構造であり、たとえば、ウォール・ストリートからの証券投資・資金流入や、直接投資や、経済摩擦における開放要求を通して、アメリカ流のビジネス・システム(企業経営・金融システム等)が強く求められる。場合によっては、アメリカ流の民主主義の早期実現も求められる。

 そのようなアメリカの求める「純粋型」の導入に際して、それぞれの国・社会が独自に持つはずの「社会的仕組み」に整合するように、うまく受け止めてやらないと、その国の「人間社会」が崩壊してしまう危険がある。

 したがって当面強まるであろうアメリカのインパクトの中で、何を受け入れ、何を拒絶するのかを決定するためにも、このような問題意識を持って、アメリカ経済社会を分析検討して、その成果を国民に提供すべきであろう。

III.朝日データベース・プロジェクトとの共同

<渋谷博史>