【渋谷 博史・加瀬 和俊】 第3回プロジェクト・セミナー →【討論】
討論
議論は多岐にわたって活発に行われた。
渋谷報告に関しては、とくに90年代の市場主義について、福祉国家性との関連、70年代、80年代の日米逆転・再逆転が市場性の多寡によるようにいわれがちだが実際はどうか、アメリカナイゼーションとグローバリゼーションがイコールで結ばれうるのか、加瀬氏には国民国家と国際調整が2項対立的に設定されているが、グローバリゼーションの中で国民国家が変質し、従来型の国際関係でない関係になっているところに問題が起きているのではないか、市場化されないという食糧・農産物が実際には多量にグローバルな市場に出ていっているのではないか、農業保護政策は、先進国と途上国では全く違った問題として現れるので、国際調整という場合先進国同士だけでなく広くさまざまなケースを見なくてはならないのではないか、などの質問が出された。
これにたいして、渋谷氏は、アメリカは純粋型に近い市場主義を他へ半ば強制的に適用し、自国の利益が浸透しやすい道筋をつくって、これをグローバルスタンダードと呼ぶという意味で、いわば世界制覇ともいえる道を歩んでいる、こういう見方でアメリカの経済学者とも組んで共同研究を企画している、と述べた。加瀬氏は、今までの社研の共同研究の中では十分に位置づけられてこなかった、市場経済から落ちる問題の一つ、農業・食糧問題という窓から国民国家とグローバリゼ−ションの問題をとりあげ、地域による問題の捉え方の違いや理念と実際の関係なども整理しつつ、共同研究プロジェクトに参加したい、と述べた。
また、市場の失敗と国家の失敗を見てその両方からどういう道を探るのかという問題のたて方をする必要がある、グローバリゼーションとアメリカナイゼーションをイコールでつないでアメリカの世界制覇とするのは、アメリカの外へ出る意志の有無の問題がある、グロ−バルな市場というが、まだ国民経済の枠内で市場が形成されているものも、雇用でいえば多数派である、という指摘があり、アメリカナイゼ−ションは消費の世界、労使関係、金融等々それぞれの局面で度合いが違うので一律に語らない方がよいのではないか、という指摘がなされた。
<文責:土田とも子>
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