ご無沙汰いたしております。
東京大学社会科学研究所の末廣です。
最後の通信からしばらく時間がたってしまいました。
さて、最近の動きを少し紹介させていただきます
(1)わたしたちの共同プロジェクトの研究協力者であるアジア経済研究所の星野妙子氏を研究主査とする新しい研究プロジェクト「開発途上国のファミリービジネス研究会」が立ち上がり、4月20日(土)に第1回の研究会を開きました。この研究会には、「自由化と危機の国際比較研究」のメンバーである末廣昭と、この4月に東京大学社会科学研究所に着任された中村尚史氏(日本経済史)の2名が参加しています。
この研究会は、ラテンアメリカ諸国(メキシコ、チリ、ブラジル、アルゼンチンなど)と東・東南アジア諸国(日本、韓国、台湾、タイ、インドネシア)の企業とその行動・戦略に関心をもつ研究者が参加し、両地域において支配的な企業形態である「ファミリービジネス」を多角的にとらえようとして、始まったものです。研究期間は2年間。1年目は資料集を作成し、2年目に研究書をまとめて、アジア経済研究所より刊行する予定です。
テーマは、各国における財閥やファミリービジネスの比重の大きさ、その事業基盤、発展過程、危機や自由化以後の彼らの対応などです。切り口は「所有と経営の関係」(事業の継承の仕方、専門経営者の存在などを含む)、「家族制度と企業組織」(各国の家族法原理、相続のシステムと家族企業・家産の関係など)、「ファミリービジネスの存続と衰退の論理」(ファミリービジネスは新しい企業のモデルたりえるのか、それともいずれ衰退する企業形態なのか?)、「コーポレート・ガバンナンスとの関係」「日本の財閥との比較」などなどで、今後、研究参加者が各国の事例を紹介しながら、どういう「問題群」が成り立つのか、1年間かけてじっくり議論を進めたいというのが、星野主査の意向です。なおこの研究会における議論は、随時ホームページで紹介していく予定ですので、ご期待ください。
(2)わたしたちの共同プロジェクトの重要な協力者のひとりであるアジア経済研究所の宇佐見耕一氏が、今年の3月にアジアとラテンアメリカの社会保障制度の比較について、興味ある資料集を編集され、アジア経済研究所から刊行されました。氏が2001年に編集された『ラテンアメリカ福祉国家研究序説』(アジア経済研究所)の研究成果をふまえて、その研究対象地域をアジアにまで拡充したもので、2003年度刊行予定の研究書の準備作業をなすものです。
内部資料ですので一般には頒布していませんが、残部があるそうですので、関心のある方には無料で配布しますとのことです。興味のある方は直接、宇佐見氏と連絡をとってください(連絡先:アジア経済研究所地域研究第2部 宇佐見 043-299-9624;usamik@ide.go.jp)。
*宇佐見耕一編『新興工業国の社会保障制度・資料集—アジアとラテンアメリカの比較研究』アジア経済研究所、2002年3月(「まえがき」と「目次」がご覧いただけます)
(扱っている国・地域は、韓国、台湾、香港、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、インド、キューバです)。
(3)末廣は2002年3月に、末廣昭編『岩波講座東南アジア史 第9巻 「開発」の時代と「模索」の時代』(岩波書店)を刊行しました。また5月には末廣昭編『タイの制度改革と企業再編—危機から再建へ』(アジア経済研究所)も刊行される予定です。同様に、星野妙子編『開発途上国の企業とグローバライゼーション』(アジア経済研究所)も5月に刊行される予定です。関心のあるかたは参照してください。
(4)わたしたちの研究会も次第に軌道に乗ってきました。上村泰裕氏は「アジア諸国の社会保障制度」について、丸川知雄氏は「民営化問題」について、それぞれ2ヶ月に1回のペースで、研究会を現在企画中です。上村氏の研究プロジェクトは、若手を中心に年度末には独自の報告書の作成も企画しています。星野(末廣ジョイント)の「ファミリービジネス研究会」とあわせて、随時研究会の案内をホームページに掲載していきますので、今後とも変わらぬご協力をお願いします。