橘川氏からの、各プロジェクトの考えていることがおおむね出そろったが、この段階で(1)検討すべき大きな問題で抜けているものがあるか、(2)どうやって各プロジェクトを連携させていくかということを主として考えて欲しい、という発言を受け、各人からの概要の説明が行なわれた。
I. 中川・末廣・小森田プロジェクト(*別紙「研究会図」(末廣氏作成))
前回プロジェクト委員会で中川氏が報告したプロポーザルは膨大なものであったが、整理してコンパクトにまとめ、実質を固めていくために、中川、末廣、小森田各氏で10月15日に打ち合わせが行われ、以下の方針が立てられた。
別紙「研究会図」のとおり、7本あった研究の柱を3本(プラス1)にまとめる。
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研究の柱 |
a.
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貿易・金融・投資の自由化、政策決定メカニズムも含む
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b.
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経済制度改革(金融制度改革を中心に) |
c.
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社会政策(ソーシャルセイフティネット、年金改革、社会保障制度など)
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(d.)
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(展望と制度設計) |
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研究の柱の中の論点 |
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(1)世界銀行、国際会議等で議論されている事柄 |
a.
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国際短期資金の動き、証券投資と直接投資、国内金融市場・金融制度
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b.
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金融市場改革、企業財務・会計改革、経済改革関連法案、国営企業の民営化 |
c.
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年金・社会保障問題(自己負担原理)、雇用安定化、失業対策
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d.
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(地域統合、地域協力) |
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(2)地域研究者グループで議論されている論点 |
a.
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規制緩和・自由化の推移、その国際圧力・国内圧力、地域・国のパターンの違い |
b.
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制度・組織のしくみ、政策決定メカニズム(aとも関連)、政治構造との関わり |
c.
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(1)のcと重なる。ただし各国、各地域で何がイシューになっているか再検討する |
d.
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(グローバル化への統合路線or反発、選択的対応
(accommodation)) |
- (1)は主として中川氏と外国からの共同研究者、(2)は主として末廣氏・小森田氏と国内の地域研究者、4つ目の柱(d)は主として藤原氏の発言を念頭に置いている。相互に密接に連携を保って進めていく。
- 地域別の代表者として別紙「研究会図」(3)(1)〜(4)を考えており、これから依頼する。11月のプロジェクトセミナーの案内を送って出席を請うが、実際の相談は年明けに行う。
- 運営の仕方は、従来の全体研の班研究会のように月一回の研究会報告を重ねるのでなく、各地域代表者は独自に自身のネットワーク(社研の中を含む)で研究会を組織し、2ヶ月に一度程度集まって、情報交換、地域を横断するテーマをめぐる議論を行う。(詳細は別紙「研究会図」)
II. 加瀬プロジェクト
WTO改正の中での国際的な食糧問題をテーマとして設定する。食糧問題に関連する先進国間の矛盾—自由貿易、ダンピング認定、保護主義などの問題が入り乱れている状況。農業・食糧問題関係で、所内・所外合わせて8人くらいの共同研究者を考えているが未確定。また、他のプロジェクトとの関係で食糧問題に限定してよいかどうか、まだ流動的である。
III. 大瀧プロジェクト
私のグループは、すでに別紙リストの人々に声をかけ、おおむね参加の承諾を得ている。金融と労働の二つの側面から90年代の日本経済を描写し評価することが目的である。
日本の労働市場については、企業(銀行)のトップや官僚をどうやって規律付けるかが重要な問題で、90年代ここにいろいろな問題が噴出した。これは金融だけみていても分からない。企業の中でエクゼクティブがどうやって育成され、どういう人間がプロモートされてくるか、組織の論理を近経から考えてみたい。この意味で金融と労働が柱となる。
97年〜8年にかけて深刻化する不況の中で、財政をめぐる同一の人々の議論が、政府の財政改革の側に立つ主張からケインズ型の公共事業を主張する側へと、大きく変わった。労働市場の問題は政府の有効需要政策と密接に関連する。ケインズ政策の有効性と労働市場の機能の問題とか、公共事業の中味に公的な金融の果たす役割など、検討すべき問題がいろいろある。これらを念頭にメンバーを選んだ。あと金融の自由化と年金・高齢化の問題をやる人が欲しい。
IV. 渋谷プロジェクト
従来から駒場で行っているアメリカプロジェクトとテーマがある程度重なる。それが2000年で終わるはずが2002年までかかることとなった。そのネットワークを更に拡げてアメリカ研究グループを作り、このプロジェクトに貢献する計画であるが、最初の予定より2年遅れる見込み。
V. 中村(圭)プロジェクト
仁田、佐藤、石田各氏と所外から2人くらいの共同研究者を考えている。テーマは90年代のホワイトカラーの人事管理を中心とする。大瀧・松村氏のグループと内容的に重なる部分がある。アメリカとの比較も考えていて、労使関係のS.
ジャコビー氏と緩く共同研究を組む予定。この部分は渋谷氏と重なる。
橘川
私のテーマは企業から考えているが、金融・労働から規律付けを考える大瀧氏のグループとも重なり、樋渡氏とも重なる。重なる部分で連携しながらやっていくことが出来る。
90年代の日本を見るとき、法の問題がどう関わるのか、中村(民)氏に聞きたい。
樋渡
(1)比較政治の研究者 (2)国際政治経済論の学者、この二つのグループが一緒になって研究する予定である。(国際化などにともない)国内の政治的な面でどのような変化が起きているのかと日本と他国との関係が地域および国際秩序にどういう影響を持っているか、という主題とが、その関連を含めて対象になるわけである。
中村(民)
法的な問題は各連携プロジェクトのテーマそれぞれに関わっている。
国内でいうと、規制緩和は80年代から始まっているが90年代はそれに対応した政府の改革—行政改革がある。例えば情報公開などは、法律面から政府のあり方を開かれたものに変えていく側面がある。
国際政治では、地域統合への加担は重要である。例えばAPECには90年代の新しい統合のあり方がある。緩やかなネットワークで法的拘束はないが、政策決定の機能を持つ。行政改革についても近年同じような傾向があって、注目にあたいする。
大瀧氏の、金融と労働の話では、政府が規制していた部分が緩和されていくが、何らかのものが残る。この部分に法的な面が関わっている。
中村(圭)、橘川両氏のテーマも、行政からはいっていって法的側面が関われる。
加瀬氏のテーマに関して。APECがFood Systemを作る要請がビジネス界から有り、今年のサミットで、ゴーサインが出て立ち上がろうとしている。WTOでも、農業問題特に補助金に関して新しいネゴシエーションが始まっている。これはEUも絡む問題である。これらは国際通商法の領域である。
中川氏のは、開発援助という切り口であればODA規制という政府プログラムに法的な面が関わってくる。
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