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全所的プロジェクト研究
 

第2回 全所的プロジェクト研究企画委員会

第2回の委員会の議論から

9月9日に、第2回のプロジェクト企画委員会が開かれました。 今回は予算関係の他、計画をはじめているプロジェクトについて、企画の説明があり、それをめぐって議論が行われました。


 今回の全所的プロジェクト研究は、コア・プロジェクトを中心として、いくつか複数のプロジェクトがコアと緩い連携を保ちつつ相互乗り入れしながら議論を進めていく方式が企図されている。

 コア・プロジェクトとしては、・日本システムの1990年代の機能不全を、80年代に説明されていたこととの関わりで、経済・政治・法律の各方面から検討する、・金融の国際化がもたらす、G7のマクロ経済への制約の比較、などが予定されている。これと関わって、以下(1)〜(7)のような連携のテーマを計画中である。

    1. アジア、ラテンアメリカ、東欧の経済の比較。自由化と規制緩和、体制移行、グローバリゼーションのインパクト等々がポイントとなる。
    2. 開発と市場移行のマネージメント
    3. 現在企業で行われている、日本型の労務管理の見直しが、本当に有効かどうか、などの問題を扱う。
    4. ガヴァナンスを切り口としたヨーロッパと日本の比較
    5. 80年代と90年代の金融システムの問題
    6. アメリカ経済(学)の問題点を事実に即してサーベイする
    7. グローバリゼーションに対する制約要因としての農業・食糧問題を、主として先進国間の関係に絞って検討する。

 今回の委員会では、(2)「開発と市場移行のマネージメント」の計画が報告され、これからのプロジェクト研究の進め方と絡めて議論が展開された。


「開発と市場移行のマネージメント」(中川淳司氏)

  • 基本的なコンセプト

     グローバル化の中で、先進国・途上国を問わず、政府の経済政策が大きな制約を受けるようになっている。その矛盾、不適応が、例えば一部途上国に現れている金融危機・経済危機である。これらは特に、途上国の中での比較的工業化の進んだ、ラテンアメリカ、アジアNIEs、旧社会主義諸国の一部で深刻である。

     IMF・世銀はこれらに対して新古典派経済学的な処方箋で改革を進めようとしている。本研究では、IMF・世銀の政策を批判的に検討し、どのような選択肢があり得るかを考える。政策を実行する統治機構、制度、ガヴァナンスの問題も視野に入れ、グローバル化の中で、これらの従来のあり方に問題があることが明らかになりつつあるので、政策面、制度面の両方から、どう適応していったらよいのかを探る。

  • 方法としてはmulti-dimensional な方法を採る。主たる対象は一応国家の政府(national government)だが、グローバル化はその機能を壊しつつある。国際機関、地域的な統治機構も関連させながら、国内の権限配分、中央と地方政府の問題など、いくつかの異なるレベルのガヴァナンス、権限や機能をどう配分し調整していくか、という視点から見たい。
  • ターゲットとなる地域はアジア・ラテンアメリカの中進国、旧社会主義国(東欧)である。これらの地域における諸問題を、グロ−バリゼーション、貿易・投資・産業政策、金融制度改革、プライヴァタイゼーション、社会保障制度改革、農業問題、都市問題(暴力、貧困)等々に焦点を合わせ、上述のような視角から比較検討する。
  • 研究組織は、社会科学研究所のスタッフ数人がコアメンバーとなり、複数の外国の研究機関とも連携しながら、e-mailや文書によるやりとりだけでなく、国際会議も複数回開いて討議し、まとめていくことを計画している。
  • 期間は、2000年から2年間ぐらいの研究期間を経て、そのあと1年半ぐらいの間に何冊かの成果を、可能であれば複数の言語で刊行したいと考えている。
  • しかし上記の通りに進めるためには多大の研究費がかかるので、実際に立ち上げることが出来るのは部分的なものとなるかもしれない。現在研究費を申請中である。
議論の概要

  • 社研のコア・プロジェクトや、現在計画している他の連携プロジェクトとの調整をどうするかが問題である。私の考えているプロジェクトとテーマが重なるので共同でやることが出来ると思われるが、組織については、こちらでも外国を含めた共同研究者を考えているので、その調整も必要である。
  • 全体をまとめ上げるディシプリンは何か。具体的に議論をはじめると、経済・法律・政治など各専門の間で視角や議論が重なりにくいなどの問題が起きてくるのではないか。
  • 開発・移行戦略という問題領域は固まっているが、まだアプローチの仕方については詰めていない。政策の選択肢を洗い直すには経済的アプローチが必要だし、制度の問題では政治学、規制やその緩和などの実証分析では法律も必要になる。
  • 金融制度改革などを考えると途上国や旧社会主義国だけでなく先進国も対象となるので、研究協力者としては先進国対象の専門家も入る必要があるのではないか。 また社会保障制度改革やプライヴァタイゼーションを実施する場合には、大陸ヨーロッパも対象となるのではないか。
  • 単純な地域割りでなく、社研のコア・プロジェクトと重なる部分を意識的に入れて、相互に議論が行われるような組み方が必要である。
  • 開発・移行戦略という同様の領域を対象とすることを考えている私の周辺では、80年代、90年代を整理し直すことに重点があり、21世紀のパラダイムを展望しようというつもりはない。中川氏の計画は展望に傾斜しているように思われるが。
  • プライヴァタイゼーションはコア・プロジェクトで考えているガヴァナンスの問題とも重なるし、グローバリゼーションも社会保障制度改革もコア・プロジェクトと関わってくる。 開発・移行戦略を対象とするこの案は、貿易・投資に焦点があるようだが、実際は金融や通貨のほうが重要ではないか。
  • 欧米でいうと、80年代は新保守主義が勢力を伸ばし、しかし旧社会主義圏がつぶれて新保守主義も影が薄れ、90年代はグローバリゼーションの波が押し寄せ、それに絡む問題が出ているのが現在である。これらが政治的に捉えられる問題か、主として基底にある経済の問題なのか、まだ見極めがついていない。80年代90年代については、先進国も途上国や東欧と同様、まだ検討されていないことが沢山ある。日本も同時代的な観察についてはまだ見るべきものが出ていない。欧米、日本、途上国、旧社会主義国等、地域を横断する形で問題を析出できないだろうか。
  • 今までのセミナーや委員会での議論で、企画・問題意識は出そろいつつある。全体をどう関連づけ、組織するかが問題である。
  • 前回の共同研究では、全体に大きなフレームワークがあって、そこにいろいろな部分をはめ込んでいる。地域割りともテーマ別とも違う、大きな枠組みが出来ると良いのではないか。
  • 大きな枠組みはあった方がよいかもしれないが、それを無理に一つの分析枠組みであるとしない方がよい。
  • 組織だけでなく研究の中味についても大いに議論して、共通の問題関心を作っていくと良い。今年度中には組織を形作り、研究計画の中味もおおよそかためて、来年度から本格的に発足できるようにする。

〈文責:土田とも子〉