研究成果の概要

  • 株式会社化による国有企業改革については、国務院サイドがラジカルな政策提言をしている一方、党サイドには組織部を中心としてかなり頑強な抵抗があった。
  • しかし、97年の第15回党大会を転換点として、上記のバランスに大きな変動が生じ、党サイドの抵抗はかなり力を失った。
  • この転換には、WTO加盟問題を中心とする外圧が相当影響力を行使したが、国内的には国有企業改革の行き詰まりが改革を促した面も否定できない。
  • したがって、国有企業改革は新しいステップに踏み出すことになったが、これを進めるための具体的な政策が、まだ十分にはみえてきていない。
  • 現段階の課題は、現代的企業制度すなわち「株式構造の多元化によるコーポレート・ガバナンスの確立」とされているが、いずれも現場サイドの抵抗とさまざまな困難に直面している。
  • 「株式構造の多元化」については、2001年、国有株の売却に着手したが、株式の暴落を招いて中断せざるを得なくなった。
  • 「コーポレート・ガバナンスの確立」については、各種の制度改革、会社法の改正などが検討されているが、現時点では目に見える成果はあがっていない。
  • 2001年度に実施した企業調査の結果も、基本的には改革が中途半端な段階にとどまっている現状を証明するものになった。しかし、具体的な問題の解明と、要因の分析には、複雑な背景が存在しており、容易ではない。
  • 中国への外圧の効果は、経済面の実態部分では著しいものがあり、その影響を受けた変化は極めて激しいものがある。しかし、法整備支援などの名目でおこなわれている制度改革の面では、きわめて表面的な変化にとどまっており、実態的な変化は乏しい。
  • その結果、外圧を受けて制定された一部経済関係の法律は著しく実態と乖離している実効性に乏しいものが少なくなく、法治主義の向上を図るという全体的な方針との間にかえって矛盾を生ずるようになっている。