まとめ

中国の国有企業改革は現在、大きな転換点に立たされている。80年代から展開されてきた改革・開放政策の1つの到達点が近づいてきたともいえよう。すなわち、これまで中国的特色をもつ社会主義のもとでの市場経済と表現してきたものが、市場経済のグローバル化という課題のもとで、実質的な崩壊の危機に直面しているといえよう。逆から言えば、改革派は、社会主義的市場経済からさらなる1歩を踏み出そうとしているのである。
 最近、中国の一部の知識人が議論している問題に、新保守主義というものがある。簡単に言えば、90年代までの改革はきわめて中途半端なものであったが、それは改革派が保守派の思想から十分に開放されていなかったせいだ、という内容で、21世紀の改革は新保守主義を克服して、さらに一層徹底したものとなるべきだという主張である。
 「失われた10年」という全所的プロジェクトのテーマのなかで、中国プロジェクトの場合は、直感的にはその反対に、「改革のなかで発展した10年」というイメージになるように思われるが、中国の急進的な改革派から見れば、意外にも「停滞した10年」という総括になっているのである。この中国プロジェクトの研究においても、改革に対する抵抗の壁は厚く、問題は山積していることが強調されているが、発展か停滞かは、対立する評価ではなく、どこに基準を置くかによって定まってくるといえよう。
 いずれにしても、市場経済化に加えてグローバル化という課題に挑戦する中国の改革は、すでに経済改革が経済の領域のみでは先に進むことのできない段階に到達している。もはや経済改革は政治改革ぬきには身動きならないところにあるという点でも、この先の課題はこれまでと比べものにならないほど重いものとなっている。