--MESSAGE1-- (2001/7/19)  
東京大学社会科学研究所の末廣昭です。
「自由化と危機の国際比較」のテーマ選定で、世界銀行の基本的なスタンス、もしくは「ワシントン・コンセンサス」の内容が大きく変化したことを、私の論文のなかでは強調しました。この点を数字的に裏付ける興味深い報告書が、2001年6月15日付けで刊行されましたのでご紹介します。報告書のタイトルは、World Bank, Operations Policy and Country Services ed.,"Adjustment Lending Retrospective" です。1980年から2000年までの、世界銀行の「調整貸付」(adjustment lending)を、セクター別、政策目標別に整理しなおし、コンディショナリティの重点が、過去20年間のあいだにどのように推移していったのかを、詳細に分析し、世界銀行の立場から総括しています。添付した表をみていただくと、セクター別ではマクロ経済の安定化やマクロ経済のファンダメンタルズの強化をめざす、貿易・為替・金融政策の規制緩和の方針が大きく後退し、かわりに社会部門の開発や金融・民間セクターの条件づくり、整備が比重を高めていることが判明します。同時に、金融セクター向け貸付のなかでは、金融政策の自由化(金融の仲介機能)を強調する立場から、資本市場の開発や金融機関の整備へ、また民間セクター向けの貸付では、企業の財務管理(financial management)から、民間企業の活動の「規約の枠組つくり」(regulatory framework)や、「競争政策」の導入がより重視されるようになってきたことが分かります。
添付した表を参照していただければ幸いです。

添付:表