【増山 幹高】 90年代の政権変化と政党対立軸の流動化
→【討論】
90年代の政治変化を扱うプロジェクトの枠組み
樋渡・平島プロジェクトの一環として、90年代の政治変化を扱うチームの枠組みについて以下報告する。
我々のチームは、統治過程や政策に影響を与え、何らかの変化を及ぼす政治の変化について、90年代に何が起こったかを考える。90年代の政治変化については否定的な議論が多いが、ここでは従来議論されてこなかった側面に光を当ててみたい。
89年参議院、93年衆議院の選挙をとおして、それまでの自民党単独政権から、連立・連合が常態の非単独政権に移行したことが90年代の政治的特徴である。これによって政権の流動性が高まり、また政党対立軸の混乱が起こった。これによって起こった政治的変化は具体的にどういうものであったか。
論文企画を提出しているメンバーのうち、神戸大学の品田裕氏は、選挙公約の分析を通じて、キャンペーン・ストラテジーの均一化が起こっているという仮説のもとに、選挙公約における脱イデオロギー、地元利益志向という傾向を析出する。
関西大学の建林正彦氏は、自民党の分裂と90年代の政党対立というテーマで、政治家のキャリア選択における一般政策志向について分析する。与党・野党の境界の曖昧化が国会の立法活動にどういう影響を及ぼしたかを、「国会運営における多数派形成」という角度から、私が担当する。学習院の野中尚人氏は、権力核としての自民党ー官僚機構の非構造化という変化が、90年代の日本政府の意志決定システムにどういう影響を及ぼしたかを分析する。関西学院大の山田真祐氏は、与党と野党の関係が流動化し戦略が均一化してくることが、有権者のレベルからみるとどうとらえられるか、間接的な政治参加に対する意欲が下がり投票率の低下に現れる、それが住民参加などの直接的参加へ向かっていくだろう、という仮説のもとに分析する。
我々が目指しているのはおおよそ以上のようなものである。
メンバーは、何らかの制度的な影響が政治に及んでいるということを実証的に分析するというアプローチを共有している。
政治体制の基本的な認識として、政権交代がなければいけないと言う考え方に対しては疑問がある。ある均衡的な状態を考えると、二大政党制でどちらかが政権についたとき、国民の希望通りの政策を実施して行かれるとしたら、その政党は選挙で以後も勝ち続けるわけで政権交代はなくても良いと言うことになる。政治体制がよいか悪いかという場合政権交代があるかないかでいう場合があるが、交代が起こらなければならないという理由はないのではないか。政権交代が起こりうる制度であることは民主主義的な政治が機能する上で必要なことだが、起こっているかいないかではなくその中間の、与党と野党の力関係の変化などを変数化して政権の流動性の高まりや政党の対立軸の混乱等々を概念化・操作化してその効果を検証するというプロセスになっていくと思う。
<記録:土田とも子>
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