橘川委員長、樋渡委員、大瀧委員の3人からプロスペクタスが提出され、橘川氏病気欠席のため他の2委員からコアプロジェクトの切り口と他の連携プロジェクトへの要望の報告があり、それを巡って議論が行われた。 |
I..
『喪失の十年?——先進国の中の日本の政治経済変化』
90年代の日本を見るについて、国内の不況と経済の国際化とが、政治や政府の性格にどのような変化をもたらしたか、それが企業・労働・金融など社会・経済的な状況にどういう変化・影響を与えたか、その結果として政策、統治構造にどのような変化が起こったか、ということを中心に見ていきたい。
その際、経済・社会のアクターの変化を通して政策・統治構造にどういう変化をもたらしたかという側面は、他の連携プロジェクトが中心になって担当する事であると考えている。
別紙のプロスペクタスは、大枠は前回委員会に提出したものと変わっていないが、政策改革の処で他の連携プロジェクトとの関連を意識している。この項目については私のチーム以外の人にも書いてもらうとか、少なくとも他プロジェクトと共同で研究会を持つことを考えている。
他の連携プロジェクトは、上記の筋だてをある程度念頭に置いて企画を考えて欲しい。
また、労働政策の背景には、賃金問題、雇用問題があり、またその背景には、組合の変化、産業構造の変化があって、これらが市場の調整やそのプロセスにどのような変化を与えたか、という問題がある。これに関しては、中村(圭)プロジェクト、大沢プロジェクトとの調整・連携が必要であるが、まだ接触していない。
結論として、90年代の変化をどう評価するか、という問題がある。新自由主義といわれるパラダイムとの関連で、日本政治について「改革」が起こったが内実はあまり変わっていない、という通説があるが、これを本当にそうであったのか、再検討する必要がある。
以上のようにこのプロジェクトでは、企業・労働・金融といった現実の変化は他プロジェクトに期待し、統治の側面、特にそれが政策に反映する側面を中心に扱う。
II.
『「国際化」・「冷戦」以降——国際秩序の変容と日本』について。
このチームでは、経済の国際化の他に冷戦の終焉や地球大の問題の発生などの国際的な制約が、二国間関係、地域関係、国際秩序にどういう影響を与え、またそれが日本の外交政策にどういう影響を与えたか、それがまた国際関係にどう跳ね返ったか、という問題を扱う。具体的には別紙の目次にあるとおりである。
経済的なレジームはI. のプロジェクトの日本の経済的変化と関連している。国際的な要因が日本の国内に影響を与え、それが国際的な変化とともにどう政策に影響を及ぼしていたかを考えると、経済的なレジームの問題は地域の変動、地域の中の国内の変動と補完関係にあると考えられる。その意味で他のプロジェクト、特に末廣プロジェクト、橘川プロジェクトと関連している。橘川プロジェクトには、企業の国際化の問題をもっと入れる事を要請している。
貿易や環境問題は大沢プロジェクトと関係する。日本の政策対応の変化、レジームの変化との関連を見る。
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私の考えている切り口は別紙「90年代の日本経済とマクロ経済学」の通りであるが、特に以下のような点を強調したい。
何年かに渡るリサーチの結果、各プロジェクトで出てくる結論にそれほどズレはないのではないかと予想している。ただし次のような視点を共有することが重要である。
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90年代の日本経済を考えるとき、常に80年代との連関性・連続性を考えて分析することが必要である。そのうえで90年代の構造変化が、なぜ起きたのか、そのメカニズムを解明する。他のプロジェクトにもこういう視点から見ることを要請したい。
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