セミナーの記録と日程

全所的プロジェクト研究

第2回プロジェクト・セミナー

1999年5月25日 ◆於:社研大会議室

報告:末廣 昭
「コーポレート・ガバナンス」と「グッド・ガバナンス」—世界銀行、日本、タイの捉え方—

 次期共同研究を準備するプロジェクトセミナーの第2回は、末廣昭氏の報告で、「コーポレイトガヴァナンス論—世銀、タイ、日本での議論」というテーマで行われた。
 報告は、今年度立ち上げる共同研究プロジェクトでキーコンセプトのひとつとして計画されているコーポレイトガヴァナンスを取り上げ、アジアで世界銀行が提示したものとタイでの受け取り方、日本での議論を比較することによって、コーポレイトガヴァナンス論の背景とその射程、地域や立場による文脈の違いなどを析出し、共同研究としてとるスタンスのや視野の広がりを提供することを目指したものである。

【末廣 昭】  「コーポレート・ガバナンス」と「グッド・ガバナンス」—世界銀行、日本、タイの捉え方—  →【討論】

報告の概要

【報告のレジュメ】はじめに

【報告のレジュメ】「コーポレート・ガバナンス」論の登場とその背景

【報告のレジュメ】「コーポレート・ガバナンス」の定義と国際比較

【報告のレジュメ】アジア経済危機と世界銀行の「コーポレート・ガバナンス」論

  • The World Bank, East Asia: The Road to Recovery, Sept. 1998.
  1. アジア通貨・経済危機の背景
  • 危機前のマクロ経済の安定的運営は評価。現象としては、国際短期資金の流入、国内金融市場の過剰流動性と為替リスクの管理に失敗。
  • ヘッジファンドによる通貨攻撃や、貿易の域内依存率の上昇などはそれほど重視しない。むしろ、対外要因ではなく、国内金融市場の「構造的要因」「制度的弱さ」に求める。
    →通貨危機の「伝染病現象」は、域内の貿易構造や工業化の発展パターンにあるのではなく、むしろ海外投資家が、97年7月以降、タイをはじめアジア諸国の金融制度に疑問をいだき、いっせいに資金を引き上げたため。
  • 国内債券市場の未発達のもとでの金融自由化の推進(自由化方針と制度のミスマッチ)
    →商業銀行・ノンバンクを媒介とする間接金融への過度の依存
    →商業銀行の国内での制度基盤の未発達
    →海外資金、短期資金やオフショア市場に依存
    →リスク管理失敗により、いっきょに国内不良債権問題と為替差損問題が生じる
    →金融クランチ・国内不況の深刻化。
  1. 経済危機回復のシナリオ
  • コーポレート・ガバナンスの強化と国内金融機構改革の統合、同時並行的実施。
  • 商業銀行、金融機関に対する「プルーデンシャル規制」の導入と徹底。
    →不良債権(NPL)の定義(元利延納3カ月以上)、一般引当金、貸し倒れ引当金、リスクアセットレイシオ(BIS自己資本規制、8・5%)。
  • 金融機構、事業会社の「コーポレート・ガバナンス」の強化。
    1. 破産法改正、破産裁判所設置法、担保権に関する改正、外国人事業法改正など
    2. 会計、監査基準に関する「グローバルスタンダード」の導入。(タイでは、登録会計監査人は約2300人、政府公認は900人弱)
    3. 説明責任性(accountability)の導入。
    4. 情報の開示の義務づけと第3者機関によるモニタリング制度の導入。

 

  1. 世界銀行が「経済社会再構築プロジェクト」に融資するにあたってのコンディショナリティ一覧

→ 【表5、参照】法律制定、会計・監査が中心。

  1. 世界銀行の4000社企業調査(99年3月まで)
  • マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国の各国800社、計4000社のサンプル調査(実際は、3710社、うち大企業は1257社)。
  • 製造業の5セクター(食品、繊維衣類、電機機械、化学、自動車部品)
  • 企業の所有構造と取締役会の構成(社内、社外重役の比重など)

→ 【図2、参照】

※ホームページでは図表は省略した

【報告のレジュメ】タイにおける「グッド・ガバナンス」論と「強い社会」論

【報告のレジュメ】「ガバナンス」論の射程—タイの議論との比較—

<記録:土田とも子>