研究計画・方法

本研究が扱う主な政策分野と関連イシューは以下のとおりである。

(1)所得移転(所得保障、税制)、企業福祉
年金、雇用保険、児童手当、社会扶助、公的扶助、税制といった所得移転とともに、 企業年金・退職金、住宅関連、保健関連などの企業福祉を研究する。
主 査 埋 橋 研究分担者 原田、大沢、室住、鄭、ロバーツ、藤原

(2)医療保障、対人社会サービス、非営利共同セクター
医療保険、医療サービス(公営医療)、公衆衛生、障害者福祉、保育・介護サービスなどの対人社会サービスとともに、非営利協同セクターによるサービス提供、営利企業としての対人サービスも研究する。
主 査 西 田 研究分担者 広渡、大沢、宮本、鄭、ロバーツ、森川

(3)労働法・労使関係システム、雇用政策、家族、教育
狭義の労働法・労使関係システムとともに、育児・介護休業制度などの「両立支援」 政策と家族、学校教育も視野に入れた職業能力開発政策、および積極的労働市場政策などを研究する。
主 査 田 端 研究分担者 西谷、佐口、相澤

(4)住宅、土地利用、農業・食糧、環境
市場経済における関係主体間の利害調整によっては社会的に最適な解が得られないとして国家的方向付けが不可欠とされてきた諸分野——住宅、土地利用、農業・食料、環境など——において、政策と市場との相互関係がどのように展開してきたのかを、<国家><市場><市民> 社会(非政府・非営利活動)の役割分担の関係に目を配りながら、総合的・実証的に研究する。。
主 査 加 瀬 研究分担者 佐藤、岩本、谷口


以上のうち、(1)と(2)の年金と医療保険については、ソウル大学の鄭鎮星教授を中心として日韓の制度と実態の比較分析を行う。また(2)では、介護保障の詳細な研究のため日本およびスウェーデンで相当規模の実態調査(調査票調査および聞き取り・観察調査)をおこなう。スウェーデンでの現地調査の組織は宮本が担当する。(3)では、スウェーデンで研究予定の宮本、ソウル大学の鄭教授の協力を得て緻密なスウェーデン、日本、韓国の比較を行う。また、(4)は既存の比較福祉国家研究に対して全く新しい領域を開拓するものであって、この領域に厚い研究蓄積と研究者のネットワークをもつ東京大学社会科学研究所ならではの計画となっている。

 これらのイシューごとに研究分担者は、日本とともに1つ以上の(日本以外の)国を対象として、比較分析する。イシュー別の多国間比較を日本福祉国家分析に収斂させる本研究は、福祉国家の新世紀における可能性を示唆する画期的な研究となろう。