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全所的プロジェクト研究
 

第24回 全所的プロジェクト研究運営委員会(2002.5.16

出席

橘川 平島 田中   末廣   樋渡  大沢 中川 中村(民) 松村   佐野(中村圭代理) 各氏
佐藤 横田(恭) 土田 浅野  中島 各氏

欠席 大瀧   氏
1.予算執行状況

予算委員会には今年度のプロジェクト予算要求として、別紙を2箇所訂正後提出する。

2. 今後のプロジェクトセミナー予定


T

日時 6月27日(木)午後3時〜5時
テーマ 植民地なき帝国―アメリカ対外政策と地域
報告 藤原帰一氏 

・前回運営委で提案した中国の深せん大学からの研究者によるセミナーの件は、その後深せん大学から連絡がないので取り下げる。

 
3.各プロジェクト活動報告


*各プロジェクトの現在までのまとめ
          (各プロジェクトから委員長に提出されたものを転記)
◎田中プロジェクト
1.研究の到達点
(1) 研究の経緯
 科研費の助成を受けて2期に渡り実施した
 @ 地方国有企業の改革
   1995年〜1998年
   94年制定の会社法が、国有企業改革とりわけ地方国有企業の改革にどのような影響をもたらしたか調査したが、実態はそれほど変化がなく、会社法の実施は部分的なものにとどまっているとの結論に達した。

 A 会社制度におけるコーポレート・ガバナンス
   1999年〜2002年
   97年を転換点にして、会社法の実施状況に変化が生じた。国有大企業を中心に株式会社化が進み、証券法が制定されて証券制度も規範化された。WTOへの加盟を意識して、グローバル化が熱心に説かれたが、改革の進展には場所によって大きな較差が生じているとの結論を得た。

   それぞれ3年間の助成期間終了後、調査報告書を作成して提出した。また、期間中に中国で2冊の本を刊行したほか、日本でもかなりの数の論文を公表してきた。

(2) 調査項目
 研究対象は多岐にわたっているが、継続して主要な調査対象としているのは、以下の項目である。 
 @ 国有企業から改組した株式会社のコーポレート・ガバナンス
    この点については2001年に相当規模の実態調査を実施した(現在、整理中)
 A 株式会社転換後の国有企業の再編問題
 B 財政制度改革
 C 会社法、証券法の実施状況

2.得られた知見
 ・株式会社化による国有企業改革については、国務院サイドがラジカルな政策提言をしている一方、党側には組織部を中心としてかなり頑強な抵抗があった。
 ・しかし、97年の第15回党大会を転換点として、上記のバランスに大きな変動が生じ、党側の抵抗はかなり力を失った。
 ・この転換には、WTO加盟問題を中心とする外圧が相当影響力を行使したが、国内的には国有企業改革の行き詰まりが改革を促した面も否定できない。
 ・したがって、国有企業改革は新しいステップに踏み出すことになったが、これを進めるための具体的な政策がみえてきていない。
 ・現段階の課題は、現代的企業制度すなわち「株式構造の多元化によるコーポレート・ガバナンスの確立」とされているが、いずれも困難に直面している。
 ・「株式構造の多元化」については、昨年、国有株の売却に着手したが、株式の暴落を招いて中断せざるを得なくなった。
 ・「コーポレート・ガバナンスの確立」については、各種の制度改革、会社法の改正などが検討されているが、目に見える成果はあがっていない。
 ・2001年度に実施した企業調査の結果も、基本的には改革が中途半端な段階にとどまっている現状を証明するものになると予想しているが、そこに一定の傾向を読み取ることができれば面白い。
 ・中国への外圧の効果は、経済面の実態部分では著しいものがあり、その影響を受けた変化は極めて激しいものがある。しかし、法整備支援などの名目でおこなわれている制度改革の面ではきわめて表面的な変化にとどまっており、実態的な変化は乏しい。
 ・その結果、外圧を受けて制定された一部経済関係の法律は著しく実態と乖離している実効性に乏しいものが少なくなく、法治主義の向上を図るという全体的な方針との間にかえって矛盾を生ずるようになっている。

3.メッセージ
 中国の国有企業改革は現在、大きな転換点に立たされている。80年代から展開されてきた改革・開放政策の1つの到達点が近づいてきたともいえよう。すなわち、これまで中国的特色をもつ社会主義のもとでの市場経済と表現してきたものが、市場経済のグローバル化という課題のもとで、実質的な崩壊の危機に直面しているといえよう。逆から言えば、改革派は、社会主義的市場経済からさらなる1歩を踏み出そうとしているのである。
 最近、一部の知識人が議論している問題に、新保守主義というものがある。簡単に言えば、90年代までの改革はきわめて中途半端なものであったが、それは改革派が保守派の思想から十分に開放されていなかったせいだ、という内容で、21世紀の改革は新保守主義を克服して、さらに一層徹底したものとなるべきだという主張である。
 市場経済化のグローバル化という課題に挑戦する中国の改革は、すでに経済改革が経済の領域のみでは先に進むことのできない段階に到達している。もはや経済改革は政治改革ぬきには身動きならないところにあるという点で、この先の課題はこれまでと比べ物にならないほど重いものとなっている。

◎中村(圭)プロジェクト
本プロジェクト(責任者:中村圭介教授)では、大手企業における「部門の業績管理とホワイトカラーの成果管理」の実態とそれに伴う問題点をあきらかにすることを基本的な課題とする。より具体的には、@部門の業績管理とホワイトカラーの成果管理とは、互いにどのような整合性や矛盾を伴いつつ運営されているのか、A業績管理や成果管理は、実際、部門の業績向上や効率的運営といった目的にどのように貢献しているのか、B業績管理や成果管理は、ホワイトカラーの勤労意欲や人材形成など、業績や成果として必ずしも管理されない経営上の重要な項目にどのような影響をあたえているのか、といった論点にそって、部門別業績管理とホワイトカラーの成果管理の実態を分析することを課題としている。
こうした課題を遂行するため、プロジェクトでは、現在までに、自動車産業1社、流通業(百貨店)1社、鉄鋼業1社、電機産業2社、通信業1社の計6社を事例とするヒアリング調査を実施した。それぞれ、各業界を代表する大手企業を事例として選んでいる。今後は、流通業(チェーンストア)1社をさらに加え、計7社について、ヒアリング調査を継続する予定である。なお、インフォーマントは、各企業の人事担当者や、各部門のライン管理者などである。また、各事例の調査は、プロジェクトへの参加委員が各人の担当する事例の調査を進めるかたちで実施している。
現在までにえた事実発見としては、@各社に共通して、部門別業績管理とホワイトカラーの成果管理が何らかの形で実施されており、ホワイトカラーの成果管理をつうじて、各部門の業績向上が目指されていること、しかし、A業績管理に利用される業績指標は、各社で異なり、売上高や営業利益率、営業利益の額、コスト削減の率や額など多様であること、また、Bこうした業績管理の指標が、どれだけ下位のレベルを単位として把握されているかも、企業により異なること、さらに、Cこれらの業績管理指標を利用した業績の管理が、どれだけ厳格におこなわれているかの程度も、企業により異なること、D部門別業績管理とホワイトカラーの成果管理との関係については、各社とも、両者の合理的な連携のあり方を模索している段階であり、実態としては、部門の業績目標とホワイトカラー個々人の業務目標とが必ずしも対応していないこと、また、E個人の成果管理においては、仕事への取り組み姿勢や、本人や部下の技能向上など、部門の業績には直接反映されにくい項目についても評価することで、ホワイトカラーの勤労意欲の維持や、人材形成の促進がはかられる事例もみられることなどがあきらかになってきている。
本プロジェクトのような問題関心から、企業における部門別業績管理とホワイトカラーの成果管理を実態に即して分析した研究は少ない。本プロジェクトは、実践的にきわめて重要でありながら、実態の把握や分析がおろそかにされてきた分野における新たな知見の獲得をめざしている。

◎末廣・小森田プロジェクト (自由化と危機の国際比較研究会)
同研究会では、アジア、ラテンアメリカ、ロシア東欧の3地域に共通する研究課題として、次の3つを設定した。
(1) 自由化と危機のプロセスの政治経済学的研究
(2) 企業の再構築と企業ガバナンスの比較研究
(3) 社会保障制度と生活保障システムの比較研究

このうち(1)については、中川プロジェクトの「開発と市場移行のマネジメント」と緊密に連携しつつ、国際シンポジウムを都合3回開催し、自由化が各国・地域に与えるインパクトと、危機後に導入された制度改革(金融制度改革など)がどのように実施されているのかについて、比較検討を行った。

(2)については、当初、「企業ガバナンス」の観点から、自由化と危機が各地域の地場企業にどのようなインパクトを与え、かつ企業再構築をどのように進めているのかを検討しようとした。しかし、情報の開示をベースとする証券市場改革、役員と少数株主の権限の強化に重点をおいた公開株式会社改革、ファミリービジネスの所有と経営の分離に焦点をあてた経営改革といった従来の視点、とりわけ企業の所有関係を重視する視点からは、3地域の企業の再編の実態が十分解明できないことが判明した。そこで方針をかえ、ひとつは3地域に共通する国営企業(もしくは市場移行国の国有企業)の民営化問題と民営化ののちの経営の実態の比較、もうひとつはグローバル化、自由化のもとでの地場企業(民族系企業)の企業戦略と行動、経営組織の変化に関する具体的分析の2つを新たな課題として設定し、経営実態を重視する比較研究をより進める体制をととのえた。

(3)社会保障制度については、各地域の法律・制度的枠組みの情報収集とデータ整理をおこなう一方、生活保障システムを非公式にささえる各地域の独自の仕組み、例えば、大企業の社会福祉制度、家族による保障システム、宗教組織をベースとする互助的団体などの役割についても検討を行っている。日本にとっても生活保障システムの再構築は焦眉の課題であり、この問題に各国・地域がどのように取り組んでいるのか、地域の独自性に注目しつつ比較を進めた。なおこの研究はアジア経済研究所が実施している、ラテンアメリカと東アジアの社会保障制度の比較研究と連携している。

◎原田・加瀬プロジェクト 
  (2001年度福祉国家グループの具体的成果)
(1)所得移転班は、税制・社会保障制度等における「家族に対する政策的配慮」を国際比較
日本を含む先進諸国の税制、社会保障制度等のタイプに関する先行研究等を探査し、共通認識といえる点を抽出するとともに、家計における税・社会保険料の負担率および社会保障給付の受給率(所得移転の帰着)について、最新のデータ(OECD、 Taxing Wages 1999-2000, 2000)を用いて比較を行った。

@先進諸国の税制、社会保障制度等のタイプ
日本については、税・社会保障の負担も給付も最も薄いタイプであること、諸制度が男性稼得者を中心とする世帯単位であり、女性の就業をはじめジェンダー平等を促進するタイプではないことなどが、先行研究において共通して指摘されている。あらためて保育サービスや育児・介護休業など、家族的責任に係る社会サービスや制度も含めて比較すると、日本は、共働き世帯であれ、専業主婦世帯であれ、家族的責任の遂行に対する公的支援が低いタイプに属する。また、男性が世帯の主たる稼得者であることを前提に、世帯を単位とする側面が強く、ジェンダー平等の促進との親和性が低いタイプに属することも再確認。

A家計における税・社会保険料の負担率および社会保障給付の受給率(所得移転の帰着)
ア.比較内容
各国の税制、社会保障制度等における被扶養配偶者に対する制度的な配慮の度合いを把握することを目的として、世帯所得が労働者一人当り平均賃金所得のそれぞれ2/3、1/1、4/3、5/3の場合について、片働き世帯、共働き世帯、単身世帯の負担率の比較を行った。
イ.対象国:オーストラリア、ドイツ、スウェーデン、イギリス、アメリカ、日本
ウ.結果

租税負担率
オーストラリア 共働き<<片働き=単身
ドイツ 共働き>片働き<単身
日本 共働き≒片働き<単身▼(低所得者層では、共働き>片働き、▼高所得者層では、共働き<片働き)
スウェーデン 共働き<片働き=単身
イギリス 共働き<<片働き<単身
アメリカ 共働き=片働き<単身

エ.今後、LISデータおよび全国消費実態調査のマイクロデータの提供を受けて、本格的なシミュレーション分析を行う計画。
(2)社会サービス班は、千葉県介護サービス利用者実態調査に協力し、2002年3月に報告書を提出。今後、サービス供給のストックとフローのマッピングを行い、介護保障政策の分析に進む計画。

◎樋渡・平島プロジェクト
1. 国内政治プロジェクト
(1) 第一段階(1999-2002)ほぼ終了
二回のワークショップ(2001年6月30日・7月1日と2002年4月5・6日)
成果刊行 『社会科学研究』53巻2・3号(2002)
『流動期の日本政治』(2002年刊行予定)

知見:「失われて十年」の政治的側面の検証
 政策対立軸の不在、政党競争の混乱、政策対応の不全が検証される範囲と、政治的混乱と政策対応の不全の因果関係を明確にした。
 自民党単独安定政権でも実施されたであろう、既存の政策過程の制度を維持するような対応を「旧い政治」、従来の政策改革の枠組をかえるような政策を「新しい政治」と規定し、両者がどのような関係になったかを考える。
 学問的には80年代の自民党単独安定政権期に形成された現在の通説的日本政治論の再評価をおこなう。
 結論として、90年代に旧い政治に対抗して、新党により担われた新しい政治指向が出現し、政権の脆弱性と景気の数度の後退のため、既存の政策過程制度に依存せざるを得ず、旧い政治を温存することになった。この意味では政策対立の萌芽はあったが、政権の脆弱性と景気対策の緊要性が、逆に新旧の政治対立が政策対立として制度化することを遅延させている。

(2) 第二段階(2002-2005)
最初の国際シンポを2003年1月9-11日に開催
第1段階の反省を踏まえて、以下のような2プロジェクトを予定

 @『現代日本の政党政治変化』
自民党単独政権後、新しい選挙制度がどのような変化を日本の政党政治にもたらしているかの検証。
既存の政治行動、計量政治の理論に依拠しつつ、日本の政党政治の検証にひつようなデーターの収集、データーベース化、およびその分析を国際共同研究としておこなう。

 A『先進国の中での日本の政策対応』
90年代不況に見舞われた、特に調整型市場経済といわれている日本やドイツ、スイス、北欧が国際化の中でどのような財政福祉政策の対応を行ったかの比較分析を国際共同研究としておこなう。
先進国比較政治の通説的理解である組織労働に着目したネオ・コーポティズム論への選択として、雇用セクターの調整と経済国際化のなかでの経済政策と福祉政策の関連に着目する議論の日本中心とした先進国比較での有用性も検討する。この際も、日本の経済社会政策過程の資料の収集、整理、データーベース化を試みる

2. 国際関係プロジェクト
(3) 第一段階Out of the US Shadow?(1999-2002)最終段階
二回のワークショップ(2001年3月日と2002年6月20-22日)
成果刊行 英文刊行(Out of the US Shadow?)を予定

知見:冷戦・国際化以降の日本外交の構造的変化の検証
 日米関係の変化が日本の対アジア政策、対国際機間政策にどのような変化をもたらしているかを明確にした。
 結論として、80年代に日米の経済摩擦が90年代経済分野での日本に地域政策や国際機関での政策の積極性をもたらす一方で、アメリカの安全保障政策により日米同盟は強化されていった。
 学問的には80年代に形成された「反応国家(reactive state)」論を吟味し、日本の政策対応の積極・消極の濃淡を説明するのに日米関係と国内要因の相乗関係を見ることの有用性を検討する。

(4) 第二段階(2002-2005)(Proactive Diplomacy)
2002年4月から準備勉強会を開始、来年度に第一回国際シンポを開催すべき企画・準備中
第1段階では中国に関する分析が弱いとのの反省を踏まえて、Proacitive Diplomacyプロジェクトでは中国の経済軍事大国化を前提に、軍事的対抗と経済協力を推進する日米両国が、どのような形で、長期的趨勢への対応と短期的争点への対応のバランスを取っていのか、このような国際政治学の「覇権変動論」など変動分析の理論的欠落を補う。この際、特にアメリカ(できれば中国)の外交政策資料の体系的整理とデータベース化を試みる。

「失われた10年」の日本政治  (平島 健司)
@ドイツとの比較から得られる鳥瞰
 80年代、多くの先進国では、オイル・ショックによってもたらされた経済危機を契機として、ケインジアンから小さな政府、規制緩和、民営化などを標榜する新自由主義へと政治的潮流の変化が見られた。潮流の変化にもかかわらず、政治の基本的枠組みの変化が最も小さかったのが日独であった。
 しかし、90年代を迎え、両国は、バブル経済とその崩壊、国家統一というそれぞれに固有の巨大な政治課題に直面した。しかし、ドイツは、統一のコストを過小評価して対応し、日本も従来型の景気対策を重ねた。
ドイツは、92・93年には状況認識を改め、その政治構造の骨組みを活用して問題の解決を試みて成功したが、日本は、むしろ政治(選挙制)改革を優先させた。歴代の連立政権はさまざまな改革を掲げたが、経済のさらなる悪化に直面し、結局は従来型の経済対策を踏襲した。
 通貨同盟に参加することによって政策の選択肢を狭められたドイツでは、さまざまな主体(政党、労使、州など)が、統一によって深まった内部亀裂のために妥協調整の能力を低下させた。98年の政権交代も、この点では新たな局面を開かなかった。個別の政策過程や政治行政制度における無視できない部分的変化と改革の上に、日本の現政権は、与党と官僚制が強固に維持してきた政治構造を解体させうる政策を掲げるに至ったが、その成否は今後にかかっている。
Aスイスとの比較
 日本と極めて対照的な政治構造をもつにもかかわらず、スイスも政治の枠組みをほとんど変化させていない。しかし、グローバル化や欧州統合に対応して農業など非競争的部門の経済的開放が進められた一方、難民の受け入れも増大した。排外主義を掲げる政党が躍進した。いっそうの社会的経済的変化を求める圧力が、強い慣性をもつ政治制度を強く圧迫しつつある点で日本と共通する。
B今後の計画
 今年度は、昨年のスイス・日本セミナーの成果の刊行準備を進める。来年度は、9月に客員教授として来日するR. チャーダ教授(オスナブリュック大学)と協力し、日独セミナーを開催する予定。セミナーでは、@に示した鳥瞰を、両国の政治的変化の環境要因(対外関係やグローバルな変化など)の異同に留意し、比較を個別的政策領域にも及ぼし、より正確、体系的で整合的な説明に彫琢する。

◎中川プロジェクト(「開発と市場移行のマネージメント」)
1 今までの研究の到達点
アジア、ラテンアメリカの比較的開発の進んだ途上国及び中東欧の旧社会主義国の開発戦略、市場移行戦略を比較検討することを通じて、IMFや世界銀行などの国際開発金融機関が提示してきた比較的一律の開発・市場移行戦略を批判的に再検討し、これに代わる開発・市場移行戦略のモデルを提示することを目標として研究をスタートさせた。3度にわたるワークショップを通じて、研究対象国と研究テーマのしぼりこみを行い、最終的に以下の4点について研究することとした。
 第1に、グローバル化に関する一般的検討。このグループには、対象地域におけるグローバル化推進の中心となった三つの国際機関(世界銀行、IMF、ガット・WTO)の活動の総括、対象国におけるこれらの国際機関の推進した開発・市場移行戦略採用の政治過程の分析、グローバル化への対応としての地域統合の有効性とその限界などの研究が含まれる。
 第2に、対象国における金融自由化と金融制度改革の分析と評価。
 第3に、対象国における民間セクターのグローバル化への対応。コーポレートガバナンス改革と外資戦略、企業M&A戦略を中心とする。
 第4に、対象国における社会保障制度改革の分析と評価。

2 得られた知見
研究を通じて、対象国がその歴史的経緯や政治経済社会的な特性を反映して、予想以上に多様な開発戦略、市場移行戦略をとってきていることが明らかになった。そして、グローバル化を推進する国際機関の側も、これに対応してかなり柔軟な処方箋を提供していることも明らかになった。また、対象国、対象分野により、開発戦略、市場移行戦略の成否にもかなりのばらつきがあることが明らかになった。
これらの知見に基いて、開発戦略、市場移行戦略の普遍性と経路依存性を仕分けし、最適な(複数の)開発戦略、市場移行戦略のモデルを構築することが今後の研究の課題である。

3 メッセージ
グローバル化は対象国にあまねく影響を与えたが、それを受けての開発戦略、市場移行戦略の内容も、またその有効性にも大きなばらつきがある。それを的確に分析し、普遍的な開発戦略、市場移行戦略のモデルを構築することが重要である。

◎大瀧プロジェクト
本プロジェクトでは公共政策セッションの研究が先行している。

公共部門の改革において日本の特殊法人の改革は最も重要な政策課題の一つである。
この改革は70年代から進められ、国鉄や電電公社の民営化とその後の規制改革に見られるように大きく進展した分野はあるものの、90年代に完全に停滞してしまった。
郵貯に代表される政府系金融機関の改革は遅々として進まず、この「金融社会主義」が90年代の日本経済の停滞の主因の一つであるとする意見すらある。

本プロジェクトでは、まず、しばしば指摘されながら厳密な実証的な裏付けを欠く「政府系金融機関の拡大による民業圧迫」が本当にあるのかどうかに焦点を当てた。
「郵貯」が「民間銀行」を圧迫しているのかを預金市場のデータで分析し、その仮説を否定した。つまり、郵貯の拡大によって民間銀行の預金集めが難しくなりそのため民間銀行が衰退したという図式はいかなる時期をとっても説得力を欠くことが明らかになった。

しかし他方で、単に市場でもパイの奪い合いという側面だけでなく、公的金融機関の存在が民間企業の経営戦略自体を歪める側面も本研究において指摘された。
公企業の存在が民間企業の横並び行動を誘発し、民間企業の競争を非効率的な方向に歪ませる可能性が明らかになった。
この点について更に研究を進めている。

また、公共事業の効率性についての研究も進んでいる。
公共事業が非効率的であるという指摘は既に多くの研究でなされているが、何故非効率的になるのかを90年代の地方政府の起債を手がかりに分析している。現在までに明らかにされたことは、既に90年代に地方政府の行動原理にある程度の市場メカニズムが反映されはじめていること、
しかし制度上の問題からこの程度がかなり制限されていることが明らかにされた。

現在、特定のルールの改革がどの程度のインパクトを持つのかに関して研究を行っている。

4.科研費関係


・昨年11月に提出した「特定領域研究」についてヒアリングに呼ばれることとなった。
ヒアリング期日―6月6日
当日の出席―橘川武郎、苅谷剛彦、樋渡由美 各氏
ヒアリング時のプレゼンテーション作成のために各プロジェクトとも、@今までの研究の到達点、A得られた知見、Bメッセージ、をまとめる。

5.その他


※環境物品等の調達の推進に関する方針
(平成12年法律による)
(横田氏より報告)
環境省より、国立大学が調達する物品を、環境に配慮したものにする方針が通知された。
プロジェクトでは、印刷物を製作する場合に、その基準を満たすよう考慮されたい。
・基準 古紙配合率70%以上
具体的にはDP-Bなどを印刷所に発注する場合に、この基準を守ることを印刷所に通知する。
市販の書物などについては、この基準は通知されていない。

<文責 土田とも子>